森博嗣「作家の収支」感想。小説家は意外と稼げない!?

作家
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意外と知ってるようで知らない作家の収支。おもしろかったですね。

作家の収支をおもいっきり実例を上げて公開してくれたのが、森博嗣さんの作家の収支。作家の収入が平然と暴露されています。

森さんは理系畑の人なんで、とにかく合理的。今回のこの本も別に自慢とかってわけじゃなく、需要に応えて、ということ。

さてさて、気になる作家の収支、ってか特に気になるのはやっぱり収入源ということですけども。

作家の主な収入源となると印税と原稿料になります。

原稿料というのは、たとえば雑誌等に載った原稿に対して支払われるもので、基本的に原稿あたりに決まったお金が支払われます。

印税というのは、書籍として発売されたものの売上の何%かが収入として入ってくるというものです。

印税率についてはある程度決まっていて、10%程度が業界の常だそうです。森さんなんかは交渉の余地ありと言っていますが。

主な収入源はこの二つと言っておいてなんですが、金額の割合では印税のほうがはるかに多いと思います。

というのも、ベストセラー作家である森博嗣さんの印税は多い時で年間1億円を超えています。

原稿料というものは基本的に料金は一律となっているようで、相当数の数をこなしたところで1億円稼ごうなんてのはかなり厳しいものなので。

どちらかというと雑誌や新聞に載る原稿というのは、作家にとっては宣伝に近いようなものみたいですね。

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作家は儲からない?

多い時で印税だけで年間1億円を超えていた森博嗣さんですから、原稿料を含めて考えれば年収は余裕で1億では収まらないぐらいでしょう。

本書内で書かれている年間あたりの印税額は、2000年から2008年までは1億円程度で推移していますから、少なくともその期間は年収1億は軽くパスしていたわけです。

年収1億なんてたしかにとんでもないことですよ。間違いなく稼いでいる部類に入るでしょ。わたしの年収の何倍だって話です。

でもね、森博嗣さんって国内でもトップレベルに本が売れている人なわけです。

というのも、2010年に行われた、本書内で書かれているAmazon日本10週年記念で選ばれた殿堂入りアーティストというものがあります。

その中の和書部門で殿堂入り20名に森さんも選ばれているんですよね。その他の作家はというと、

  • 浅田次郎
  • 伊坂幸太郎
  • 石井裕之
  • 江原啓之
  • 大前研一
  • 北方謙三
  • 西原理恵子
  • 佐伯泰英
  • 塩野七生
  • 司馬遼太郎
  • 谷川流
  • 苫米地英人
  • 西尾維新
  • Peter F. Drucker/上田惇生
  • 東野圭吾
  • 宮部みゆき
  • 村上春樹
  • 森博嗣
  • ヤマグチノボル
  • 山崎豊子

となります(あいうえお順)。

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Amazonってのは今じゃあ日本で一番売れている本屋なわけですから、少なくとも2000年から2010年までの間で最も本の売れた20人と言っても過言ではないわけです。今だったら池井戸潤さなんかが入ってきそうですね。

国内トップ20に入るような人でも、書籍の売上からだけじゃあ年間1億円程度の収入にしかならないのかって考えると作家ってのは意外と稼げない職業だなーって思うわけです。

10年間1億円プレーヤーを続けるってのは確かにすごいことですけどね、トップレベルでその程度って考えると少しさみしいかなって。

まぁたしかに、本書内で森さんが書いているように同じ殿堂入り作家でも西尾維新さんなんかはもっと稼いでいるでしょう。自分の書いた小説だけでなく漫画の原作なんかもやってますからねぇ。

ほかにも東野圭吾さんや村上春樹さんなんかは単純に発行部数だけでも頭一つ二つ抜けてるんじゃないかって気もします。

まぁひとくくりにトップ20といってもそりゃまぁ差はあるよねって感じではあるんですが。

ミリオンセラーなんてそうそうでない

今これ言っちゃうと火花が出たじゃん!なんて言われそうではありますが。

でも、オリコン調べでの2015年の本のランキングではミリオンセラーは火花のみです。

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ビリギャルなんかは年間をまたいでミリオンを超えたようではありますが、そもそも今時は本なんて大して売れないんですよ。

この手のヒット作は突然変異みたいなもので、出版不況と言われるぐらいですからほんとに売れないんです。

ただこれは出版側の乱発に購入層がついていけてないということでもあるんですけどね。ジャンルの多様化もあって、需要が分散してしまっているんじゃないのって。

森さんの代表作もであり最も売れた本でもあるすべてがFになるにしても、ノベルス版と文庫版をあわせて78万部程度。

シリーズ累計100万部なんてのはよく聞きますけどね。トップレベルの作家でもミリオンセラーなんてのはそうそう出るものじゃないってことですね。

東野圭吾さんや村上春樹さんなんかはポンポン出してますけど。

大きく稼ぐにはメディアミックスが必須

書籍に印税がかかるように、ドラマ化や映画化、アニメ化などのメディアミックスにも原作者として印税が入ります。

東野圭吾さんなんかはガリレオシリーズをはじめとして多数のメディアミックス作品があります。これだけで相当な収入になってるはず。

西尾維新さんにしても化物語シリーズは何度もアニメ化されていますし、原作を担当しためだかボックスもアニメ化までされました。

最近ではドラマ化の常連の池井戸潤さんもめっちゃ稼いでいるような気がします。半沢直樹や下町ロケットとかね。

作家がほんとうの意味で大きく稼ぐためにはやっぱりメディアミックスは欠かせないってことでしょう。

森さんのすべてがFになるも最近になってドラマ化され、それにあわせて原作の発行部数も増えたように、そういう相乗効果も見込めますよね。

作家の多様化

昔に比べていろんな人が本を出すようになりました。むしろ本業作家って人は減ってきてるぐらいじゃないですか?

本を出すだけ出して、ある程度名前が売れたら講演会などで収入の大部分を稼ぐ名前だけの作家もいるみたいです。

コンサルタントや事業家が本を出すケースも増えてきました。

いわゆる成功者たちが出す本とは違って、ノウハウを書いたものだったりするわけですが、これらはどちらかというとその後自分の事業につなげるためのものになっていることが多いです。

要は集客のためのアイテムということですね。広告として使えて、さらには名刺代わりにもなる。本を出してますって言うととたんに信用力がありそうな気がしますもん。

同じように集客のアイテムというと、最近ではブロガーが本を出すケースも増えてきましたね。

イケダハヤトさんやちきりんさんなんかは、ブログへの集客のために本を出していると公言しています。

ブログに集客したほうが収入になるからってことですね、ブロガー程度の知名度ではなかなか本が売れないってのもありますが。

いかにして自分のフィールドに持ち込むか。そのためのツールとしての本はたしかに優れているんでしょうね。

ただまぁそのせいかつまらない本も増えたなぁって気もしますが。

出版不況もあって、出版へのハードルってのは下がってきてるんじゃないかなーって思いますね。

作家の副収入

多様化のところにも書きましたが、本を出すだけじゃなくって作家にはいろいろと収入を得る手段がありますね。

森さん自身も講演会なんかはもちろん、一時期は雇われブロガーとしてブログを書いていた時期もありました。

WEBダ・ヴィンチ上で約3年間連載され、3ヶ月毎に書籍化され刊行。この時期、ブログの原稿料と書籍化されたものの印税だけでも年間1000万円程度になっていたとか。

これってむしろそれほど売れていない作家こそやるといいことかもしれないですねぇ。マクロなレベルでの作家のプライベートの切り売りは確かに需要がありそうな気もします。

なにせ出版不況ですから、大多数の作家は売れない作家にほかならないわけです。作家一本で生きていくってことのハードルはどんどん上がっているんじゃないんでしょうかね。

作家業はあくまで労働収入であるということ

印税って言うと不労所得感がありますけど。でも自分で書いた本を売るということですから、基本的には労働収入にほかならないでしょ。

あ、売るってのは間違ってるか。売るのはあくまで出版社や書店で、作家の仕事は書くことですね。

実際、本が売れなくても印税は入りますからね。印税は発行部数に対してかかるので、売れなくても印刷された時点で印税は確定します。

増刷、文庫化に関しては不労所得と言ってもいいかもしれないですけどね。

ちなみに森さんは2008年をもって、半分引退状態です。作家業に費やす時間をここからかなり絞るようになりました。

その結果、印税も半分程度になったと。働く時間を減らしたらその分収入も減った、当たり前の話ですよね。

そういう意味ではやはり作家業ってのは労働収入でしかないんですよね、それこそ森さんクラスになっても。

作家をめざすメリット

作家というのはどこまでいっても結局は労働収入であり、その大半は売れない作家であるとすれば、ではその作家を目指すメリットとは何なのでしょうか。

世には作家志望はたくさんいるように、わたしも一応その枠に入るかなと思います。積極性は低いですが。

作家業の一番のメリットといえば、その作業工程の少なさということになると思います。文章が書ければ作家にはなれる。

要は参入障壁が低いんですよね。さらには出版社も乱発も相まって作家としてのデビューのハードルは下がっているようでもあります。

そしてその作業工程の少なさは、副業としても成り立つということです。かくいう森さんも結構な期間、大学の助教授としての職務と兼業でしたから。

文章が書ければ誰でもなれる職業が作家であり、ただそこに価値を与えられるかどうかってことです。

この本は作家を目指す人にとっては必読本になると思います。そしてここに書かれている以上のことを受け取って、作家という職業の厳しさを味会うといいと思います。

目指すメリットは間違いなく。でもそれだけで食べていこうとするとめっちゃ大変ですよね。

サラリーマン作家という生き方なんかもひとつの選択肢としてはいいんだと思います。自分が目指すのもそれですね、基本的には。

それではまたー。

以上、あぽかる(@apokaru)でした。