今までに読んだ歴代メフィスト賞受賞作品を紹介する

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世の中に文学賞は数あれど、ここまで尖った文学賞はないのではなかろうか。

そんな文学賞がメフィスト賞です。まともじゃない、ぶっとんだエンタメ作品が読みたいならメフィスト賞作品を選んでまず間違いはないと思います。

そもそもがこの日本一尖った文学賞というキャッチフレーズも自称ですからね、すでにはみ出してる感が凄まじい。

尖り具合を自称するだけあって、たしかに他の新人賞とは一線を画した賞であるのは間違いない。

わたし個人的にはね、なんつーか相性が良いというか。メフィスト賞作家の作品は合うものが多いなーって思います。

そんなわけで、今までに読んだメフィスト賞作品を紹介していきたいと思います。

メフィスト賞の詳細は公式サイトへどうぞ→メフィスト賞とは?|webメフィスト|講談社ノベルス|講談社BOOK倶楽部

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歴代メフィスト賞受賞作品

受賞順にわたしが今までに読んだものを紹介していきます。

第一回受賞作 森博嗣 すべてがFになる THE PERFECT INSIDER

14歳のとき両親殺害の罪に問われ、外界との交流を拒んで孤島の研究施設に閉じこもった天才工学博士、真賀田四季。教え子の西之園萌絵とともに、島を尋ねたN大学工学部助教授、犀川創平は1週間、外部との交信を断っていた博士の部屋に入ろうとした。その瞬間、進み出てきたのはウェディングドレスを着た女の死体。そして、部屋に残されていたコンピュータのディスプレイに記されていたのは「すべてがFになる」という意味不明の言葉だった。
amazonあらすじより

栄えある第一回メフィスト賞受賞作はドラマ化・アニメ化・ゲーム化と、発売から20年経ってもメディアミックスの続くベストセラー。

森博嗣さんの代名詞とも言える専門用語の飛び交う理系ミステリィは、当時はミステリィの邪道ともいわれるものであり、そう思えば第一回受賞作にこの作品を選んだメフィスト賞の普通じゃなさがわかるのではないでしょうか。

メフィスト賞は森博嗣さんをデビューするために設立されたと言われるほど、メフィスト賞と森博嗣この二つは切っても切れない関係です。

しっかりしたロジックとインパクトのあるトリックと、ミステリィとしても非常に面白い作品になっています。

第二回受賞作 清涼院流水 コズミック 世紀末探偵神話

「1年に1200人を密室で殺す」警察に送られた前代未聞の犯罪予告が現実に。1人目の被害者は首を切断され、背中には本人の血で「密室壱」と記されていた。同様の殺人を繰り返す犯人「密室卿」の正体とは?推理界で大論争を巻き起こした超問題作
amazonあらすじより

第一回受賞作とはある意味で対極にある、これはこれでぶっとんだ、ミステリーと言っていいのかどうかも悩まされる問題作。

すべてがFになるとは全く違った、ロジックがあるわけでもなくトリックが秀逸なわけでもなく、それでも勢いでもっていく作品のパワーはは凄まじいものです。

ある意味でこの作品が本当になんでもありなメフィスト賞を形作ったのかもしれない。

真面目に読んだら負けなような、とにかくまともじゃない作品を読みたいって人にはぜひともおすすめです。

第十三回受賞作 殊能将之 ハサミ男

美少女を殺害し、研ぎあげたハサミを首に突き立てる猟奇殺人犯「ハサミ男」。3番目の犠牲者を決め、綿密に調べ上げるが、自分の手口を真似て殺された彼女の死体を発見する羽目に陥る。自分以外の人間に、何故彼女を殺す必要があるのか。「ハサミ男」は調査をはじめる。精緻にして大胆な長編ミステリの傑作!
amazonあらすじより

一気に回が飛びます。第十三回受賞作。

この作品も非常に有名で、思いっきりネタバレしますが叙述トリック作品でおすすめをあげるとしたらまず間違いなく出てくるであろう作品。

ギミックも秀逸、しっかりと作り込まれていて全力で読者を騙しにきます。

スプラッターな表現や現実感のない雰囲気など、いい感じにリアルさと非現実感が両立されています。

気持ちよく騙されたい人にはオススメですね。

第十九回受賞作 舞城王太郎 土か煙か食い物か Smoke, Soil or Sacrifices

腕利きの救命外科医・奈津川四郎に凶報が届く。連続主婦殴打生き埋め事件の被害者におふくろが? ヘイヘイヘイ、復讐は俺に任せろマザファッカー! 故郷に戻った四郎を待つ血と暴力に彩られた凄絶なドラマ。破格の物語世界とスピード感あふれる文体で著者が衝撃デビューを飾った第19回メフィスト賞受賞作。
amazonあらすじより

こちらもまた非常に問題作。バイオレンス蠢く世界観。

まずその空白の見えない、ページを埋めつくす文章量に驚かされるでしょう。これが舞城王太郎さんなんです。

ただ、文章量は多くてもストーリーは強烈なスピード感があって、間違いなく読者は置いてけぼりにされます。

ミステリー要素はあっても、それを読者に解かせはしない。とにかく力技。

圧倒的なまでに読者を顧みないその作風はデビュー作から完成していると思います。

これもまた、メフィスト賞じゃなかったら表に出てこなかかった作品だったかもしれないですね。

第二十一回受賞作 佐藤友哉 フリッカー式 鏡公彦にうってつけの殺人

妹が死んだ。自殺だった、と僕のイカれた家族は云うが。そして現れた男。手にはビデオ。内容は妹のレイプ中継。渡されたのはレイプ魔どもの愛娘達の克明すぎる行動表。こうされちゃあ、する事は一つ。これが自然な思考だね。そして僕は、少女達の捕獲を開始した。その果てに…、こんな馬鹿げた世界が用意されているなんて知りもせず。
amazonあらすじより

ぞくぞくするサスペンス感と暴力性、いい感じに狂った雰囲気。

最近では文学賞をもらったりする佐藤友哉さんですが、やはり原点となるとこの作品。

なんというか、遠慮がないんですよねこの人も。表現したいことがあったらとにかくそれに向けて突っ走る。

メフィスト賞作品はミステリー風味な作品が多い傾向ですが、この作品も例に漏れずミステリーに見せかけたなにか。

メフィスト賞受賞作ってこうなんですよね、表現したいことがあってそれを表現するためにミステリーっぽくしてるだけみたいな。

バイオレンスとミステリーは相性がいい。

第二十三回受賞作 西尾維新 クビキリサイクル 青色サヴァンと戯言遣い

自分ではない他人を愛するというのは一種の才能だ。他のあらゆる才能と同様、なければそれまでの話だし、たとえあっても使わなければ話にならない。嘘や偽り、そういった言葉の示す意味が皆目見当つかないほどの誠実な正直者、つまりこのぼくは、4月、友人玖渚友に付き添う形で、財閥令嬢が住まう絶海の孤島を訪れた。けれど、あろうことかその島に招かれていたのは、ぼくなど足下どころか靴の裏にさえ及ばないほど、それぞれの専門分野に突出した天才ばかりで、ぼくはそして、やがて起きた殺人事件を通じ、才能なる概念の重量を思い知ることになる。まあ、これも言ってみただけの戯言なんだけれど
amazonあらすじより

化物語シリーズのヒットや掟上今日子シリーズのドラマ化など、一般的な知名度をどんどん高めている西尾維新さんのデビュー作。

この頃はすごくまっとうなミステリーを書いているんですけど、でもそれもあくまで舞台装置でしかなくって謎解きを楽しむようなものではなくてあくまでもメインは青春小説といった感じ。

いわゆる中二病的な、特に多感な中高生には間違いなくハマる作品。この感覚はおそらく時代を問わない、普遍的なものだと思います。

この作品には西尾維新さんらしさが思いっきり詰め込まれています。化物語シリーズなどのメディアミックス作品から西尾維新さんを知ったような方にはぜひともこのクビキリサイクルを読んでもらいたい。

すべての西尾維新作品の原点がこの作品にあることがわかってもらえると思います。

第三十一回受賞作 辻村深月 冷たい校舎の時は止まる

閉じ込められた8人の高校生――雪はまだ降り止まない
「ねえ、どうして忘れたの?」
雪降るある日、いつも通りに登校したはずの学校に閉じ込められた8人の高校生。開かない扉、無人の教室、5時53分で止まった時計。凍りつく校舎の中、2ヵ月前の学園祭の最中に死んだ同級生のことを思い出す。でもその顔と名前がわからない。どうして忘れてしまったんだろう――。
amazonあらすじより

文庫で上下巻合計1000ページを超える大作。この分量の作品を受け入れてしまうのもメフィスト賞作品の普通じゃないところでもあります。

デビュー作とは思えない作り込み。辻村深月さんの真骨頂とも言える濃い心理描写。

作者の名前を使った登場人物だったり、かつてはミステリーのお約束でもあった読者への挑戦だったり。

ミステリー作品としての楽しさと、丁寧な心理描写と。グイグイ引き込まれてしまって長さをまったく感じません。

メフィスト賞作品は救いのないような作品が多いんですけど、この作品には最後に残るものがあるような、優しい作品になっています。

第三十七回受賞作 汀こるもの パラダイス・クローズド THANATOS

周囲の者が次々と殺人や事故に巻き込まれる死神(タナトス)体質の魚マニア・美樹(よしき)と、それらを処理する探偵体質の弟・真樹(まさき)。彼ら美少年双子はミステリ作家が所有する孤島の館へ向かうが、案の定、館主密室殺人に遭遇。犯人は館に集った癖のあるミステリ作家たちの中にいるのか、それとも双子の……?最強にして最凶の美少年双子ミステリ。
amazonあらすじより

ライトノベル風なテイストから繰り出される強烈なアンチミステリー

ミステリーのタブーを平気で突破する、繰り出される飛び道具の数々。

古典的なトリックだったりクローズドサークルなんてのはもはや現代においては通用しない物が多い中で、それを真正面から笑いものにしているというか。

でもこれってそういった過去作へのリスペクトがあってこそですよね。そういったものを知らなきゃそもそもネタにもできない。好きだからこそ、自分の手にかけるみたいな。

これまでのメフィスト賞作品の流れを引き継ぎつつ、そこに真っ向から立ち向かうような。型にはまったミステリーじゃ物足りない人にはぜひ。

第三十七回受賞作 次郎遊真 マネーロード

4年もの間ホテルにひきこもる、他者との肉体的接触を極度に嫌う、相対する人間の“金に対する想い”が様々な幻覚となって現れる―これらはネット上で「金の声を聞く男」と呼ばれ、株式市場の値動きを予見し二百五十億円超の資産を築いた「ヒィ」の「症状」である。その彼のもとに、一枚の旧札が送られてきた。それこそが、捨て子だった「ヒィ」の本名が記された伊藤博文の千円札、失くしてしまった唯一の大事な宝物だった…。送り主は、投資ファンドの代表である沢谷という男。かつて「ヒィ」との仕手戦で屈辱的な大敗を喫していた。描いた絵図を台無しにした仇敵「ヒィ」に対して、巻き返しを図る沢谷は何を!?
amazonあらすじより

初っ端からお金がしゃべりかけてくる。正直意味がわからないと思うんですけど、それだけでこの作品の異常性が伝わるのではないでしょうか。

テイストはハードボイルド。そして秀逸なのが心理描写。出落ちで終わらないというか、しっかり作られているからこそ飛び道具が生きるというものです。

メフィスト賞作品らしさを押さえつつ、明らかにおかしな角度から妙なスパイスを付け加えた、とんでもない問題作だと個人的に思っています。

第四十三回受賞作 天祢涼 キョウカンカク

死体を燃やす殺人鬼・フレイムに妹を殺された天祢山紫郎は、音が見える探偵・音宮美夜と捜査に乗り出す。美夜は殺意の声を見てフレイムを特定するも、動機がわからない。一方、山紫郎は別の人物を疑い…。
amazonあらすじより

ライトノベル寄りのミステリー・サスペンスで、ファンタジックな要素もあってそのあたりもメフィスト賞らしさですね。

作中でも言われているように、この作品はミステリー作品におけるホワイダニットとなっている一方で、真相はかなり力技というかぶん投げているというか。

ある意味ではスリリングで、ある意味ではバカミスっぽさもあって。キャラクター性が強いのもメフィスト賞らしさと言えますね。

第四十七回受賞作 周期律 眼球堂の殺人 ~The Book~

神の書、“The Book”を探し求める者、放浪の数学者・十和田只人が記者・陸奥藍子と訪れたのは、狂気の天才建築学者・驫木煬の巨大にして奇怪な邸宅“眼球堂”だった。二人と共に招かれた各界の天才たちを次々と事件と謎が見舞う。密室、館。メフィスト賞受賞作にして「堂」シリーズ第一作となった傑作本格ミステリ!
amazonあらすじより

王道的な本格ミステリー、そしてメフィスト賞らしさ。クローズドサークルから集まる各回の天才たちから、そして最後のひっくり返しまでどこをどう切り取ってもメフィスト賞な作品。

ぶっ飛んだ作品が多い中で、こういった真っ当かつ本格的なミステリー作品が出てくるのもメフィスト賞の魅力だと思います。

館シリーズを思わせる堂シリーズということで、メフィスト賞のミステリーなんで色物ばっかだろって思ってるミステリー好きにおすすめしたいですね。

第五十回受賞作 早坂吝 ○○○○○○○○殺人事件

アウトドアが趣味の公務員・沖らは、仮面の男・黒沼が所有する孤島での、夏休み恒例のオフ会へ。赤毛の女子高生が初参加するなか、孤島に着いた翌日、メンバーの二人が失踪、続いて殺人事件が。さらには意図不明の密室が連続し…。果たして犯人は?そしてこの作品のタイトルとは?
amazonあらすじより

この作品を読んだあと、メフィスト賞の長い歴史の中でも相当にぶっ飛んだ作品がまた出てきたなと驚かされましたね。

まずはタイトル当てというとんでもない読者への挑戦、しっかりと納得できるタイトルになっているのもさすが。

そしてタイトルにしっかりと繋がるインパクトの強すぎるギミックと、メフィスト賞作品にふさわしすぎる出来栄え。

色物も本格もしっかりととんでもないものが出てくるメフィスト賞はホントに他の文学賞とは一線どころじゃないぐらいに違う次元にいますね。

メフィスト賞作品の傾向

あまり今のところ多くは読めていないのですが、とりあえず作品の紹介はここまでで最後にメフィスト賞作品の傾向について少しだけ。

メフィスト賞の応募ジャンルはエンターテイメント作品、ただそれだけ。

ミステリーだろうがSFだろうがファンタジーだろうがなんでもよく。面白かったら絶対に本になるっという非常にシンプルなもの。

比較的ミステリー系の作品が多い傾向はあるんですけど、それは森博嗣さんや清涼院流水さんの影響が少なからずあるということと、そして多くの作家がミステリーを道具として扱っているということ。

なんというか、ミステリーが書きたいから書いているというよりも、書きたいことを書くための道具としてミステリー作品としているといった感じ。

ミステリー好きがぶっ飛ぶような作品が多く見られるのがメフィスト賞作品です。

ジャンル問わずエンタメ作品好きな人にはもちろん、普通のミステリー作品に飽きてしまった人にもおすすめしたいですね。

それでは今後も読み終わったものについては追加していきますのでよろしくお願いします。

それではまたー。