池井戸潤「ようこそ、我が家へ」匿名の恐ろしさってガチで怖くね?

作家
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月九のドラマにもなったこの作品。原作とドラマとの相違点はちょいちょい知ってたんですけど。原作では相葉くんが主人公じゃないとかね。

でもこれあれだわ、絶対原作読んだほうがいい。原作のがはるかにおもしろいもん。ドラマ観た人は絶対原作も読みなさい。

わかったかね?ということで読書感想文いきますー。

あらすじ

真面目なだけが取り柄の会社員・倉田太一は、ある夏の日、駅のホームで割り込み男を注意した。すると、その日から倉田家に対する嫌がらせが相次ぐようになる。花壇は踏み荒らされ、郵便ポストには瀕死のネコが投げ込まれた。さらに、車は傷つけられ、部屋からは盗聴器まで見つかった。執拗に続く攻撃から穏やかな日常を取り戻すべく、一家はストーカーとの対決を決意する。一方、出向先のナカノ電子部品でも、倉田は営業部長に不正の疑惑を抱いたことから窮地へと追い込まれていく。

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テーマは家族、その結束。

最初はなんつーか、会社での話と言えが嫌がらせされる話と、平行して進んでいく中でなんかちぐはぐだなーって思ってたんですけどね。

話が進んでいって家族もみんな戦っているんだってことを倉田主人がわかっていくところとか、ああちゃんとつながってくんだなっておもった。家族が結束していくってのはいいよね。

みんな生きていればいろいろなことがあるんだよな。そりゃそうだ、当たり前の話なんだけれど。普通にしているように見えて苦労していたり、努力して勝ち取ったものがあったり。

そういう普通なことを、家族を通して表現したのがこの作品だなとおもった。

企業小説としても十分なおもしろさ。ナカノ電子部品をめぐる架空請求詐欺もめっちゃおもしろくって、これだけで小説一本分のネタになるぐらいに。というか最初はこれメインにして家族への嫌がらせはいらないんじゃねとかおもってましたし。笑

もう一つのテーマ「匿名性」

上に書いたように、この作品の半分は「名無しさん」との戦いになります。ちょっとしたことから家へ嫌がらせされ覆わぬ事件に発展していく、という話なわけです。

ネットの匿名性なんて事が言われるようになって久しくもあるわけですけど、顔しか知らない相手なんてそれこそ知らないのと一緒なんですよねぇ。

毎朝同じ電車で乗り合わせるあの人も、駅のトイレで一緒になったあの人も、毎日向かいのホームで電車を待っているあの人も。顔は知っていてもただそれだけ。これってリアル世界での匿名性にほかならないんですよね。

だから嫌がらせされようとも、顔だけがわかっていても。それだけじゃあどうしようもないんですよね。わりとまじめにこれって怖いことですよねぇ。

防ぎようがないってことでもあるんですよねぇ。駐車場に止めておいた車にいたずらなんてされても犯人なんて見つけられないですもん。この社会が人々のモラルで成り立っているというのがよく分かるよ。

ドラマの話

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ドラマの主人公は倉田お父さんではなく健太くんが主役でした。演じるは嵐の相葉くん。

まぁわかりますよ、月九ドラマだしおっさん主人公はどうなのってのも。ジャニーズ起用したいのもわかる。わたしはそれで喜ぶ側ですし。

沢尻エリカのキャラも良かったです。一緒に過ごす家族団らんのシーンもたしかに悪くなかった。

でも、こと家族という面で見るとやっぱり健太視点からじゃあ物足りないんだよなあ。倉田お父さんが想う家族であるからこそ家族というテーマが生きるんだなって。

相葉くんを起用したがゆえに健太の悪さも再現されなかったですしねぇ。あれはゲームという言葉を象徴していて結構必要なシーンだと想うんですよねえ。

あとはボリュームが足りない中でいろいろなオリジナル要素を入れすぎて結構グッチャグッチャになってた印象です。お話を広げるのって大変なのねぇ。

つまんなかったってことはないですけどね。でも原作と比べれば差は歴然。つーことでドラマを観た人は原作も読みましょう。

ドラマでキャラのイメージが立ってる分読みやすくもあるとおもいますよ。メディアミックス作品の原作を読む時ってこういう利点がありますね。イメージに引きずられるってデメリットもあるけれど。

ということでぜひ読んでみるといいです。それではまたー。以上、あぽかる(@apokaru)でした。