住野よる「君の膵臓をたべたい」感想。タイトルのインパクトだけじゃない、切ない青春小説。

住野よる
このサイトの記事内には広告が含まれています。

最近話題のこの「君の膵臓をたべたい」。タイトルの印象がバツグンですよね。

実際わたしも読むまでは猟奇的なのか、グロなのかスリラーなのか。そんなイメージでしたもん。

でも読んでみるといいですねーこれ、青春。Cali≠gariの依存という名の病気を治療する病院を思い出しましたよなんとなく。

以下感想です、ばっさりネタバレしてるんでご注意を。

あらすじ

偶然、僕が病院で拾った1冊の文庫本。タイトルは「共病文庫」。
それはクラスメイトである山内桜良が綴っていた、秘密の日記帳だった。
そこには、彼女の余命が膵臓の病気により、もういくばくもないと書かれていて――。
病を患う彼女にさえ、平等につきつけられる残酷な現実。
【名前のない僕】と【日常のない彼女】が紡ぐ、終わりから始まる物語。
全ての予想を裏切る結末まで、一気読み必至!

スポンサーリンク

タイトルに込められた意味

これ、タイトルはもう完全にインパクト重視なのは間違いないですよね。でもそれで終わっていないというか、ちゃんと意味をもたせられている。

冒頭で軽く茶化して印象を薄くしてラストで回収する。君の膵臓を食べたいという言葉に込められた気持ちは「君のようになりたい」。

人気者の彼女と日陰者のぼく。正反対だったからこそ惹かれ合った二人だけに通じる言葉。

ただのインパクト重視の言葉だと思わせておいて、そこに込められた思いはむしろ切なくさせられる。

帯の「読後、きっとこのタイトルに涙する」はちょっと言い過ぎにしても。

あくまで純粋な青春小説

この歳になってから読む青春小説はくるものがあるなぁ。そうなんだよな、この本はあくまで青春小説。

ボーイミーツガールものというとやっぱり恋愛モノとして受け取りがちですけどね、でもこの本は青春小説だから。

この二人の関係を恋愛関係としてみるのはむしろ陳腐になるってもの。そこが主題じゃないんだよって話です。

二人の関係を通して周りと繋がっていく。恋愛はたしかに青春の一要素かもしれないけど、成長もやはり青春の一要素。

そう、この本の主題は恋愛ではなく成長だってこと。

映像化なんてされる可能性もこのままだとありそうなんですが、雑に恋愛モノとして片付けるようなことはよしてほしいですね。

主人公の名前の仕掛け

この作品では、周りの人間が主人公を呼ぶ時は【】になっています。【仲良し】くん、みたいな感じ。

これは周りの人間が主人公のことをどう思っているのかわかりやすくする仕掛けではあるんですが、まぁミステリーになれた身としてはなんかギミックがあるんじゃないかと邪推してしまうわけで。

とりあえず名前に関するトリックみたいなのは一切ないので、これから読むって人は安心して読んでください。

主人公の名字が最後はあの音で終わるのは途中でわかったので、名字は江戸川かなーなんて勝手に推理してました。超的はずれ。

でも志賀直哉と村上春樹をくっつけるのってなんか微妙じゃない?あんまり共通点もなさそうな気もする。本に興味のない女子高生は志賀直哉知らなそうだし。

ということで名前に関する仕掛けはちょっと肩すかしでした。最後に【?????】になったところを読者に想像させたいってことだよね、そうよね。

調べてみると作者の住野よるさんは乙一さんだとか辻村深月さんだとか好きなようで、それは作品からも伝わってくるなー。住野よるからは森野夜を思い出したもん。

ただこのお二方の作品はギミック部分もかっちりしているから、そういう本だと思って読むのはちょっとがっかりしちゃうんじゃないかなーとも思う。

この本はあくまで青春小説。それ以上でもそれ以下でもない。ただしとびっきり良質な青春小説。

ということでこの本めっちゃおすすめです。読んで損はないですよ。普段本を読まない人だとかそんなくくり関係なしに読んでもらえたらなーっておもいます。

それではまたー。